1.今後の持続的な成長に向けて必要な視点
中小企業庁は2023年5月に中小企業白書をとりまとめ、公表しました。
中小企業の売上は2021年第1四半期以降、増加傾向にあり、宿泊や交通などは引き続き厳しい状況にあるものの、情報通信、運輸、小売、建設業では2019年対比売上高が増加するなど、業種によっては感染症流行前の水準以上に回復しています。
白書では、今後さらに売上を伸ばすために、イノベーションや事業再構築が必要と指摘しています。
つまり、既存の事業の延長ではなく「大胆な変革」が求められていると言えます。
そのためには、環境問題への対応など多様なステークホルダーに配慮した「サステナブル経営」の視点で改めて事業を見直し、持続的な成長に向けた源泉を見つけることが必要です。
例えば、カーボンニュートラルを好機ととらえてイノベーションに取り組む中小企業の事例なども白書では紹介されています。
「サステナブル経営」の視点について白書の中で直接的な言及はありませんが、働き方改革やエネルギーの効率的な利用などにも直結する「デジタル化」について大きく取り上げられています。
2.デジタル化による生産性向上
労働力人口が不足する中、少ない人手で対応していくために「生産性の向上」は喫緊の課題です。
デジタル化によって生産性を向上させることで、省エネルギー効果や資源の有効活用も期待できます。
特に中小企業では、事業承継をきっかけに取り組み始めるケースも増えています。
しかし、白書によると、感染症流行前と比べ、中小企業のデジタル化の取組みは進展しつつあるものの、従業員数が少ない企業ほど進められていない現状が明らかになっています。
2022年におけるデジタル化の取組状況(従業員規模別)
2022年時点で、従業員数21人以上の企業は5割以上が、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいるのに対し、20人以下の企業では25%程度しか取り組めていません。
人材リソースの不足がデジタル化を進められない大きな原因となっており、特に小規模な企業では、デジタル化を進めるにあたって支援機関に相談するケースが増えています。
白書では支援機関として、自治体や商工会議所、地域金融機関が連携し、地域一体で中小企業のデジタル化を支援している事例も掲載されています。
大企業からの生産性向上への高まる要請を受け、今後さらに中小企業のデジタル化の需要は増えることが想定されます。
中小企業からの幅広い相談に適切に対応できるよう、組織・団体を超えた連携体制の構築が重要になると考えます。
参考 ・2023年版「中小企業白書」