2018年税制改正情報 ~改正の目玉は「働き方改革」の後押し!?~

2018年07月12日

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今回のブログでは、「2018年税制改正情報」についてお知らせいたします。
毎年改正が行われている税制ですが、2018年度の注目はどのようなところでしょうか?
弊社でも大変お世話になっている税理士の安井誠先生に聞いてみました!

◆税制改正の意図◆

 平成30年度税制改正大綱では、個人所得課税について『……様々な形で働く人を応援し「働き方改革」を後押しする観点から特定の収入のみに適用される給与所得控除や公的年金等控除の金額を減らし、どのような所得にでも適用される基礎控除の金額を増やす(負担調整の比重を移していく)ことが必要である……。』としています。そして『……こうした基本的考え方の下、負担の変動が急激なものとならないように、まずは、給与所得控除・公的年金等控除を10万円引き下げるとともに、基礎控除を同額引き上げることとする。……』としています(この改正は2020年から実施されます)。

 さらに、政府は2018年 6月15日に閣議決定した「骨太方針」のなかで、2019年10月からの消費増税を確実に行う旨を明記しています。この「10増10減」調整と消費増税は、本当に「働き方改革」の後押しになるのでしょうか?

◆個人所得課税にかかる主な改正事項◆

(下記の規定は2020年から実施されます)

① 10増10減調整とは?

納税者全員に適用される基礎控除額(現行38万円)を一律10万円増額するとともに、給与所得者に適用される給与所得控除が一律10万円減額されます。さらに、公的年金受給者の公的年金等控除も一律10万円減額されます。

② 扶養親族の金額要件

上記①により、給与所得控除の最低額が55万円(現行65万円)となることから、改正後はパート等による給与収入が「55万円+48万円(改正後基礎控除額)= 103万円」以下であれば、その人は同一生計配偶者・扶養親族に該当することになります。……ということは、基礎控除が増額されたとしても、現行の収入要件である 103万円(65万円+38万円)と変わることがありません。

③ 基礎控除額は逓減する!

本人(納税者)の合計所得金額が 2,400万円を超えると、その人に適用される基礎控除額が逓減(48万円⇒32万円⇒16万円)していきます。そして、合計所得金額が 2,500万円を超えると、その人は基礎控除が適用できなくなります。

④ 給与所得控除額の上限が下がる

給与収入が 850万円超の場合に、給与所得控除の上限額が 195万円に減額(現行は給与収入が 1,000万円超の場合に上限額 220万円)されます。

※ 同一生計内に22歳以下の扶養親族がいる人は、負担増が生じないような調整があります。

⑤ e-Taxは使用すべき?

事業所得者に適用される青色申告特別控除額のうち「65万円」の控除額が10万円減額されて55万円となります。ただし、電子計算機を使って帳簿書類を作成・保存する場合や、e-Taxを使って確定申告する場合には65万円の控除額が維持されます。

それでは、上記①~⑤の内容から結論を導いてみましょう。

<増税になる人>

○合計所得金額が 2,400万円超の人(対象となる納税者全員)

○給与収入が 850万円超の給与所得者(同一生計内に22歳以下の扶養親族がいない場合)

○電子計算機やe-Taxを使わない事業所得者(65万円の控除額を利用している人)

<結論>

 今回の税制改正により2020年以後に増税になる人は、合計所得が 2,400万円超の人・給与収入が 850万円超のサラリーマン・e-Taxを使わない事業主などです。そして、その前の2019年10月からは、消費増税が行われています(政府の骨太方針による)。しかも消費税は、逆進性のある(低所得世帯ほど消費税負担率が高い)税といわれます。

 これらをまとめると、なんとなく「働き方改革の後押し」の意味が分かったような気がしませんか? ……多様な働き方は確実に増えつつありますが、それよりも消費税導入後の景気の落ち込みによる税収減を補うために、今のうちに「高所得者増税」を規定しておき、さらに、その補完をより確実なものとするためのe-Tax使用による個人事業者への申告規定を設けておく……。このように考えた方が自然だと思いませんか?

 結局、働き方改革の後押しの裏側で、国税当局は、税金をとり易いところから、かつ確実に徴収する税制改革(大きな流れ)を意図しているのではないでしょうか。

yasui

安井先生、解説ありがとうございます。

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