ニュースでよく聞く「GX」の最新動向

2022年11月15日

2022年も国内外で、猛暑・熱波や大雨による洪水など、様々な気象災害が発生しました。
私たち人間社会が人為的に排出する温室効果ガスにより、今後も気象災害がますます頻発化・激甚化する可能性が指摘されています。

日本政府の目指すGX

日本政府はこのような懸念を背景に、「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。
目標達成に向けた取組みを経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体を変革させることをGX(グリーントランスフォーメーション)と呼びます。

IT分野では、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革することをDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼んでいますが、GXもDXと同様に「変革」を示す言葉であることが特徴です。
また、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)は、GXからさらに視野を広げ、企業や社会におけるサステナビリティ全般への取組の「変革」を意味します。

GX実現のための「グリーン成長戦略」

GX実現には、エネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組みを、大きく加速することが必要です。
そのために政府が、政策を総動員することで企業の取組みを支援するべく策定したのが「グリーン成長戦略」です。
グリーン成長戦略では、成長が期待される14項目の分野について、現状の課題や今後の取組み、および工程表を具体的に整理して示しています。

 ①
出所:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

「排出権取引市場」の実証を開始

さらに、グリーン成長戦略の実現に必要な資金需要に対応する取組みも進んでいます。
「GXリーグ」は、GXに自ら取り組む企業群と官・学の連携を目的として、経済産業省を中心に440社が参加し設立された組織です。
活動の一環として、2022年9月から東京証券取引所が実施主体となり、温室効果ガス削減量を市場で売買する「排出権取引市場」の実証が始まっています。

② 出所:日本取引所グループ「「カーボン・クレジット市場」実証事業の制度概要」

「骨太方針2022」と「GX経済移行債(仮称)」

日本政府は、GXの実現には今後10年間で官民併せて150兆円の資金が必要であるとの試算を示しており、世界全体で4,000兆円ともいわれるESG資金や、様々な民間投資を組み合わせて、どのように投資を引き出していくかが大きな課題であるとしています。

2022年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」では、新しい資本主義に向けた重点投資分野のひとつとして「GXへの投資」が掲げられました。
この中で、国内外から資金を呼び込む施策として示されたのが、日本政府が将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」を発行することで、政府資金を先行して調達し、予見可能な形で投資支援に回していく枠組みです。
具体的な起債内容は今後の検討次第ですが、資金調達に直接関わる金融機関の役割は、一層重要になることは間違いありません。

③ 出所:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2022」概要

最後に

これらの取組みに見られるように、GX実現に向けた取組みを拡大させるために、今後は資金需給を巡って、さまざまな動きがより一層活発になると考えられます。
金融機関の行職員として、このような動向をしっかり認識し、取引先のサステナビリティを効果的に推進できるよう「目利き力」を一層高めていきましょう。

 

株式会社日本総合研究所創発戦略センタースペシャリスト 新美陽大

カーボン・クレジット市場特設サイト
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/index.html

経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html