DX支援のポイント【第3回-建設・土木業におけるDXの特徴】

2023年09月13日

■アナログ的な現場作業が多い建設・土木業

3K(きつい、汚い、危険)のイメージが強い建設・土木業は、他の業界と比較して若年層の入職者減少が著しく、就業者の高齢化と相まって、技能継承が進まずに人手不足が深刻化している状況にあります。さらに2024年4月からの働き方改革関連法の適用開始により、時間外労働の罰則付き上限が厳格化されるようになるため、労働環境の抜本的な改革が喫緊の課題となっています。
また、建設現場における熟練者の勘と経験による属人的な技術を要する業務は、標準化が難しい手作業が多く、重層的な下請構造が残る業界事情もあってIT化が進みにくく、労働生産性が非常に低いと言われている業界でもあります。

 

■建設業の「現場における悩み」の具体例

多くの課題を抱える建設業においては、IT化に関する悩みとして、次のようなことがあげられます。

1.は、元請企業・下請企業間の見積や契約関係書類、図面や現場写真等の資料、作業指示書や工程表等の施工管理資料など、建設・土木業で使用される多くの書類をデジタル化することで、印刷・持ち回り・保存等に要していた時間や手間・コストを削減し、情報漏洩リスク軽減や社内監査等の円滑化にもつなげたいというニーズです。
2.は、これまで現場に出向いて実施していた管理業務や各種の手作業を、ICT技術による遠隔支援等により、できるだけ機械化・省力化したいというニーズです。
3.は、元請企業・下請企業ごと、一企業内の部門ごとにソフトウェアやIT機器を導入してきたことでシステム環境がサイロ化(各部門で異なるシステムを利用していることにより、組織内で情報にシームレスにアクセスできない、データ統合できない、情報にモレやダブリがある等の弊害が生ずること)し、業務が複雑化・煩雑化して有効活用しきれていないという状況について、システム基盤を総合的に見直して一元化したいというニーズです。

 

■IT素材・ソリューション選定のポイント

建設・土木業においてDXを進める際は、元請企業・下請企業の果たすべき役割を具体的に定め、各企業の経営体制に適したIT素材・ソリューションを選定することが重要です。

●建設・土木業で利用することの多いIT素材・ソリューションの例

上記の他、AIによる熟練工の技術継承や、AR・VRによる設計モデル可視化、遠隔支援、ハンズフリー操作などもよく利用されています。

 

■建設・土木DXに関する国の取組

建設・土木業が抱える課題を早急に解決するために、国もさまざまな取組みを行っています。

●i-Construction

国土交通省が掲げる生産性革命プロジェクトの1つで、測量・設計・施工・検査・維持管理・更新の事業プロセスでICTを導入して生産性向上を目指すというものです。「ICTの全面的な活用」「プレハブ鉄筋等コンクリート工の規格標準化」「年間を通じた施工時期の標準化」といった施策をトップランナー施策という名称で2016年から推し進めています。また、2017年に「i-Construction大賞」が創設され、毎年、地方公共団体やゼネコン・建設コンサルタント・ベンダー・メーカー等の優れた取組みが表彰されています。

●公共工事におけるBIM・CIMの原則適用

国土交通省は、2023年度より、すべての直轄土木業務・工事においてBIM・CIMを原則適用するという方針を発表しています。適用にあたっては、発注者が決めた3次元モデルの活用目的の範囲で受注者が3次元モデルを作成していくことになりますが、将来的には3次元モデルの全面活用を目指しています。

 

株式会社シルバーウェア 藤枝 徹