DX支援のポイント【第2回-製造業におけるDXの特徴】

2023年08月18日

■従来の延長線上の機械化では新しい課題に対応できない

現在、製造業の多くはコロナによる稼働抑制や、需要低迷、慢性的な人材不足等の影響により収益が大きく減少するという逆風状況にあり、こうした課題を解決する方策としてDXが期待されています。従来から製造業では工場の機械化・自動化が進んでおり、DXと馴染みやすい業種であると考えられがちですが、それが一部の業務に限られているため熟練者の勘と経験に頼らざるを得ない工程が残っていたり、設備が老朽化して更改時のメンテナンス負荷が高くなっていたりする例が多いのが実情です。

 

■製造業の「現場における悩み」の具体例

現場における悩みにはさまざまなものがありますが、多くの製造業の方と話をする中で、次の3つのことに悩んでいる姿が見えてきました。

1.は、製造ライン自体は機械化が進んでいても、稼働を止めないための各ラインへの部品供給を人力で行っていたり、製品組立後の検査工程で熟練者が目検していたりするのを効率化したいというニーズです。
2.は、顧客の現場に製品を納入後、実際に設置して使用開始する前に、現場担当者や同行管理者が抜け漏れなく検査を実施できるよう、操作手順や点検内容を確認したり、テクニカルセンターの担当者など有識者が後方から遠隔支援したりすることができるようにしたいというニーズです。
3.は、システム稼働後に機器を定期点検する際の作業を効率化し、何かトラブルが発生したときの対応を迅速化・効率化させたいというニーズです。

 

■製造業はフロントラインとバックラインに分けて課題を整理

これらの悩みを解決するには、まず、現場の実情を可視化したうえで課題を整理し、何から解決していけばよいか優先順位付けを行うことが重要です。その際、重視する視点が異なる場合が多いため、製造拠点や顧客先拠点などのフロントラインと、本部や遠隔管理拠点などのバックラインに分けて整理するとよいでしょう。

製造業のフロントラインとバックラインのイメージ

 

■施策・素材選定のポイント

次に、実現する具体的な施策を選定していきますが、その際は、「ペーパーレス」「ハンズフリー」「作業履歴の蓄積・利用」「遠隔利用」等、いかに実務作業の改善・改革につながるかについて意識し、一つの施策が他の施策の阻害要因になったり、非効率化につながったりすることのないよう、注意して推進することが必要です。
また、具体的なIT素材やソリューションを選定する際は、評価や期待効果の基準を定めたうえで、選定していきます。ここがあいまいだと、導入すること自体が目的となってしまい、期待効果に結びつかないことがあります。

 

製造業で利用することの多いITサービスの例

VR(Virtual Reality仮想現実) 専用ゴーグル等を装着して主にCGで合成された仮想現実を体験する技術。
AR(Augmented Reality拡張現実) スマートフォンやARグラスにより、現実世界にデジタル情報を重ねて表示することができる技術。
MR(Mixed Reality複合現実)

 

頭に装着するディスプレイにより、現実世界と仮想現実を重ねて表示することができる技術。
スマートグラス メガネ型(片目タイプ・両目タイプ)のウェアラブル端末で、実際に見ている光景に情報が重ねて表示される技術。ハンズフリーで動画視聴・撮影・通話ができ、AR機能を備えている場合は現実世界にあわせたデータ表示が可能となる。遠隔作業支援やマニュアル参照等、さまざまな用途に利用できる。
RPA(Robotic Process Automation) パソコン上で行われる定型業務を自動化する技術。ミスがなく、24時間365日稼働が可能。
IoT(Internet of Things) 家電、自動車、装置等をインターネットと接続し、操作や制御、通信を行う。
AI(Artificial Intelligence人工知能) コンピュータがデータを分析・学習し、従来は人間が行っていた判断や推論・予測等を行う。
クラウドコンピューティング クラウド環境でサーバー、ストレージ、ソフトウェア、ネットワーク、データベースなどのコンピューティングサービスを利用する形態。
ビッグデータ データの量や種類、発生・更新頻度が多種多様な巨大なデータ群で、それらを連携して分析することで、意思決定や将来予測に役立てることができる。

 

■システム開発は稼働させながら行うアジャイル方式が基本

選定した施策、選定したIT素材の開発・導入にあたっては、全体構想を固めたうえで、段階的にシステム開発し、実際に稼働させながら改善を繰り返していくアジャイル方式で進めていくことが重要です。これにより、リスクを最小限に抑えながら、スピーディに価値を高めていくことが可能になります。

株式会社シルバーウェア 藤枝 徹