製造業におけるSDGs

2023年02月10日

製造業は、調達した原材料をもとにモノづくりを行います。できるだけ少ないエネルギーや資源でモノづくりができているか、また、原材料の調達元における環境や労働面への配慮についても責任が問われるようになってきました。
ここでは、製造業の目標となりやすい、あるいは関心の高いSDGs目標を業界動向と併せて解説します。

日本の全CO₂排出量のうち、3割近くは製造業が排出しており、脱炭素に向けた取り組みが強く求められています。最近では、サプライチェーン全体での脱炭素への要請が高まり、取引先の大企業から具体的なCO₂削減対策を要求されるケースも出始めています。脱炭素に先行的に取り組む企業は、大企業との取引で有利になることも将来的には考えられます。具体的な取り組みとしては、製造工程におけるエネルギー使用量削減に向けて、設備のエネルギー消費効率を維持・向上するための運用改善や、高効率な省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの導入などが考えられます。また、使用時の消費エネルギー・CO₂削減に寄与する製品を開発・製造することで、取引先の脱炭素に貢献することができます。このような取組みを行っている、あるいは目標にしている企業はSDGs目標の7や9を推進しているといえるでしょう。

参考URL:中小企業のカーボンニュートラル支援策(経済産業省)

「循環型」とは、日本の環境政策では以前から使われてきた言葉ですが、欧州委員会が2015年に「サーキュラーエコノミー」を掲げて政策として打ち出したのをきっかけに、経済成長と結び付けられるようになりました。資源の利用を減らして循環させ、また、モノを長く利用できるようにする技術や仕組みを後押しし、それによって経済全体を成長させるという意図が「循環型経済」という言葉に込められており、欧州の成長戦略の軸にも位置付けられています。製造業では、製品の設計段階における原材料投入量削減の取り組み、製品使用後にリサイクルをしやすくする設計、製品の耐久性を高めること、製造プロセスで発生した廃棄物の再利用などが考えられます。

参考URL:令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省)

原材料として金属資源を使用する場合、その調達のサプライチェーン最上流にある採鉱現場においては、奴隷労働、強制労働などの人権侵害や劣悪な労働環境が現在も存在しているとの指摘があります。また、新たな鉱山開発では、強制的な土地収用など住民の人権侵害も顕在化しがちです。一部の国では採鉱事業が武装勢力の資金源(紛争鉱物)となっている場合もあります。こうした問題が顕在化すると、資源を使用する企業側への批判につながりかねません。このため、原材料調達において人権、環境、倫理等に配慮する方針をホームページ等で開示するといった対応が求められています。

参考URL:よくわかる責任ある鉱物調達のページ(JEITA)

株式会社日本総合研究所創発戦略センターマネジャー 長谷直子