第5回で、システムに詳しくない取引先と、実務に詳しくないベンダー等との間を埋める役割を果たすのが、地域の取引先企業に密着し、経営者の悩みに身近に触れている皆さんであるという話をしました。また、そういった取引先の本業支援を行うことが、金融ニーズにつながっていくということにも触れました。
一般的にDXに関するプロジェクトには大きな投資が伴います。しかしながら、目的が明確で効果も想定しやすい設備投資と異なり、システム化の成果はカタチに表れにくいものです。さらに、それが様々な要因で失敗してしまったら、せっかくの投資が全くのムダになってしまいます。したがって、DXに関する融資判断をする場合に、プロジェクトの詳細についての目利きが不可欠であるといえるでしょう。
■資金調達方法を取引先と一緒に考える
これまで一般的であった、全体設計をしてから開発するというウォーターフォール型の開発手法を前提とした場合、プロジェクトが長期にわたり、各工程の工数も積み上げられるため、ベンダーから提示される見積金額が多額になりがちです。変化の激しい環境に対応するためにスピードが重視される現代は、アジャイル型で進めていくことが望ましいと何度も述べてきましたが、取引先の企業実態とDXの方向にあわせ、どのような資金調達方法が最適なのかを取引先と一緒に考えていくことも、これからの金融機関に求められる役割であるといえるでしょう。その際、利用可能な補助金制度等についてのアドバイスもするとよいでしょう。
■金融機関には複数の立場がある
皆さんは、取引先のことを自分事として考える伴走者の立場、プロジェクトを外部から俯瞰できる客観的な立場、本業支援に役立つネットワークのハブとなる立場、そして資金計画の要となる金融のプロである立場として、取引先のDX化に対して不可欠な存在であるといえるのです。
株式会社シルバーウェア 藤枝 徹