近年、深刻な人手不足や最低賃金の上昇が続くなか、「省人化・自動化」は中小企業にとって生き残りの鍵となっています。こうした背景を受け、国が本格的に支援しているのが「中小企業省力化投資補助金」です。
今回は「中小企業省力化投資補助金」について、中小企業庁に解説していただきました。
※この記事では、2025年9時点で公表されている制度要件・公募要領等をもとにしています。最新の公募要領をご確認のうえご活用ください。

(出所)中小企業省力化補助金公式サイト
1.制度の概要・目的
中小企業省力化投資補助金とは何か?
中小企業省力化投資補助金は、中小企業等がロボット、IoT、AI、業務自動化システムといった「省力化設備・システム」を導入する際の資金を国が一部支援するものです。
この制度は、「カタログ注文型(あらかじめ登録された省力化機器を選ぶ型)」と、より自由度の高い「一般型(オーダーメイドの設備導入及び事業計画)」を設けており、事業者の個別ニーズに対応できるよう設計されています。
どのような課題を解決する目的か?
中小企業省力化投資補助金では、主に以下のような課題を解決することを目的としています。
① 人手不足の解消・軽減
多くの中小企業が人員確保に苦慮している中、人に依存した業務プロセスを自動化・機械化することで、生産性を確保する必要があります。
② 非効率的な業務プロセスの改善
各種検査、データ入力、物流、在庫管理など、手作業による工程が多く残っている企業は、業務の自動化・最適化による効率化やコスト削減・品質向上を実現する必要があります。
③ 付加価値向上・収益性改善
省力化投資を通じ、より高収益・高付加価値な事業展開を可能にし、企業の生産性を向上させ競争力を底上げすることが求められます。
④ 賃上げ・地域経済循環
補助金を通じて設備投資が進み、生産性を向上させることで、賃上げの余力を生み、地元経済へ波及効果を与えることが期待されています。
2.補助金の対象や補助上限など
補助対象となるのは、日本国内で法人登記をされている中小企業・個人事業主です。
中小企業は、業種ごとの中小企業の資本金・従業員数上限(たとえば製造業は資本金3億円以内、従業員300人以内など)が定められており、小規模企業者・小規模事業者は、常勤従業員数が、製造業その他・宿泊業・娯楽業では20人以下、卸売業・小売業・サービス業では5人以下の会社または個人事業主をいいます。
補助上限額については、カタログ注文型と一般型で異なります。
カタログ注文型の補助上限額
一般型の補助上限額
3.実際の利用状況
業種の傾向と利用内容
カタログ注文型
カタログ注文型では製造業と建設業での利用が多く、利用団体の6割程度を占めています。
建設業では測量機の導入に補助金を活用するケースが多い状況です。これは、これまで2人体制で行っていた作業を1人体制に変更できることから人気となっているようです。
また、他の補助金では補助対象となりにくい飲食サービス業ですが、本補助金では対象となっているため、利用している事業者が多くあります。利用内容は、スチームコンベクションの導入です。
→ 交付申請数及び交付決定数の推移はこちら
一般型
一般型でも利用業種は製造業と建設業が多く、利用団体の7割程度を占めています。
利用内容は、熟練技術者の技術継承や今まで手作業で行っていた業務を機械化するための産業用ロボットや工作機器の導入などです。
→ 採択結果はこちら
応募企業の規模と補助額
実際に応募している企業の規模は、カタログ注文型だと従業員数が10名以下の企業が多く、一般型では従業員数が30名以下の企業がほとんどです。
また、補助金額は、カタログ注文型の場合50万円~200万円、一般型の場合1,500万円程度がボリュームゾーンとなっています。
4.申請手続き
申請の流れと採択基準
カタログ注文型
カタログ注文型の申請手続きは、次の4ステップです。
カタログ注文型は、事業計画内容に関する詳細な案件審査が簡略化されており、採択率が高いことが特徴です。
これは、カタログに掲載されているサービス・商品が、既に審査を通ったものであるため、利用したい企業の審査が簡易になっているというイメージです。
一般型
一方、一般型の場合はステップが1つ増え、5ステップとなります。
一般型の場合は、ステップ2に記載があるとおり、事業計画書の作成が必要なことや導入金額が大きくなることなどから、半年~1年程度前には計画を立てる企業が多いようです。
採択基準としては、「省力化の割合」や「省力化された人員の活用による生産性向上の有無」、「賃上げにつながるか」、「事業計画の実効性」などがあります。
これらの情報だけを見ると、審査が厳しいように思えるかもしれませんが、実際には6~7割の採択率となっており、他の補助金よりも高い採択率となっています。
よくある失敗と注意点
申請時によくある失敗としては、「添付書類の間違い」です。非常に基本的なミスに思えますが、特に提出書類が多い一般型では、多く見受けられる失敗です。
また一般型には申請期間があるため、準備が間に合わず、準備途中の書類を申請に出してしまうというケースも見受けられます。
一般型については、公式サイトの「資料ダウンロードページ」に、公募要領の他に申請方法について図解などを交えて、詳しく解説している「交付申請の手引き」なども用意されていますので、こちらも参考にするとよいでしょう。
5.スケジュール
カタログ注文型
カタログ注文型については、令和8年9月末まで随時申請を受け付けています。そのため、補助金を利用したいサービスや商品が見つかった場合に、間を置かずに申請することが可能です。
審査から採択までは最短3か月程度となっています。申請書類に不備等がある場合は審査期間が伸びてしまいますので、注意してください。
一般型
一般型については、年に3~4回の公募回制がとられています。回ごとに公募要領等が公表されるため、注意が必要です。
2025年度の第4回公募は9月19日(金)~11月下旬を予定しています。
6.活用事例
カタログ注文型では公式サイトの「広報ツール」に、一般型では「一般型トップ」の先にある「採択結果」に、実際に採択された案件の概要紹介などの資料が掲載されています。
特に一般型については、事例は製造業の他、建設業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、運輸業・郵便業、生活関連サービス業など、複数の業態の事例が掲載されています。
ぜひ参考にしてみてください。
7.まとめとポイント
✅ 中小企業省力化投資補助金は「省力化設備・システム」に活用可能
✅ カタログ注文型、一般型とも他の補助金に比べて採択率が高く、利用しやすい
✅ 製造業や建設業、飲食サービス業などでの利用率が高い
✅ カタログ注文型は随時申請を受付しており、審査も早い
✅ 一般型は年3~4回の公募制で、準備が必要
金融機関としては、特に「作業に自動化の余地がある企業」や「人件費率が高く、生産性向上が課題となっている企業」などへの提案に有効です。
特にカタログ注文型の場合は既にカタログがありますので、機械化や省力化に関心のある企業の対しては、カタログを見せると関心をもってくれるかもしれません。
また、採択率が比較的高く、初めて補助金活用を検討する企業にも勧めやすい点もポイントです。
<中小企業省力化補助金のお問い合わせ先>
0570-099-660
03-4335-7595(IP電話等からのお問い合わせ)
中小企業省力化補助金公式サイト