DX支援で紹介したい 経営者の関心が高い「注目の助成金」とは?

2024年09月20日
DX

中小企業の経営課題の1つである「人材不足」を解消するには、「人材採用」と「既存人材の活用」の2つがあります。この記事では、金融機関が「既存人材の活用」支援をする際に活用・提案できる「人材開発支援助成金」について基礎的な解説をしていきます。

1.「人材開発支援助成金」~助成金と補助金の違い

「人材開発支援助成金」の概要を説明する前に、助成金と補助金の違いをみていきましょう。
国や地方公共団体から費用を支援してもらう制度には、「助成金」と「補助金」があります。今回の「人材開発支援助成金」は、名前の通り「助成金」の1つです。
では、この2つは何が違うのでしょうか?

助成金と補助金の主な違い

出所:筆者作成

注目していただきたいのは「審査のポイント」です。
「助成金」は要件を満たしていれば支援を受けられることに対し、「補助金」は申請をしても必ず利用できるものではありません。そのため、「助成金」は「補助金」よりも難易度がやや低いといえます。
まずは、「人材開発支援助成金は、要件を満たせば支援を受けられるもの」であることを覚えておきましょう。

2.人材開発支援助成金の概要

人材開発支援助成金は、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを計画にそって実施した場合等に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
2024年度9月現在、人材開発支援助成金は6つのコースから構成されています。

人材開発支援助成金のコースの概要

出所:厚生労働省「雇用・労働分野の助成金のご案内」より著者作成

3.注目されているコースは?

上記6コースのうち、最もスタンダードなのは「人材育成支援コース」です。「人材育成支援コース」は、①OFF-JTにより、職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練を実施した場合、②OJTとOFF-JTを組み合わせ、厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練を実施した場合、③OJTとOFF-JTを組み合わせ、有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者等に転換するための訓練を実施した場合に利用をすることができます。

一方で、助成率の高さ等から最近注目をされているのが「人への投資促進コース」です。「人への投資促進コース」は、デジタル人材の育成やサブスクリプション型の訓練といった様々なニーズに対応をするために設定されたコースです。
現在、金融機関では取引先の生産性向上や人手不足に対応をするためのDX支援を積極的に行っているかと思いますので、ここでは「人への投資促進コース」にフォーカスを当てて解説をしていきたいと思います。

「人への投資促進コース」を利用できる訓練メニューには、次のようなものがあります。

人への投資促進コースを利用できる訓練メニュー

出所:厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」より作成

①事業主が労働者に対し訓練を実施した場合(a~d)、②事業主が制度を導入した場合(e)、③労働者が自発的に訓練を受講した場合(f)、の3つがあることを覚えておきましょう。

取引先がDXを強化していく場合は、「d.情報技術分野認定実習併用職業訓練」が利用できるのではないでしょうか?
また、企業の業種や教育予算、人員によってニーズは異なると思いますが、人員が少ない中小企業では「c.定額制訓練」も利用しやすいと思います。
こういったニーズがある取引先には「人材開発支援助成金」が使えそうだと覚えておきましょう。

助成率についても覚えておくと経営者が興味を示すかもしれません。
営業店の方は、細かい数字まで覚えていなくても問題ないと思いますが、訓練内容によって助成率が異なることは覚えておきましょう。

各訓練を実施した場合の助成率(中小企業の場合)

出所:厚生労働省「雇用関係助成金支給要領」より著者作成

人材開発支援助成金を申請する場合、企業区分による助成金額の変動や加算要件、上限額の定めなど注意点が多くあります。営業店の方が取引先支援をする際は、本部や専門家(社会保険労務士等)にサポートをお願いするとよいでしょう。

4.申請方法

訓練開始日の1か月前までに「訓練実施計画書」、「年間職業能力開発計画」等の書面を準備して申請します。申請後に計画の変更があった場合は「訓練実施計画変更届」の提出が必要ですので、きめ細やかな管理が必要になります。この点を注意するよう助言しましょう。

助成金の支給申請は、訓練実施後に行う流れになります。

人材開発支援助成金の支給申請の流れ

出所:厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内」より

計画の作成には、厚生労働省の「事業内職業能力開発計画作成の手引き」が参考になります。手引きでは、能力開発計画は①経営理念・経営方針、②人材育成方針・目標、③雇用管理方針など、④職務要件、職務評価基準、⑤キャリアマップ(個人別職務評価)、⑥教育訓練体系図、⑦教育訓練計画、⑧教育訓練カリキュラムという8つの要素から構成されると解説をしています。
「人材開発支援助成金」では、⑤~⑧の内容を申請書類に記載することになりますので、参考にするとよいでしょう。

最後に

助成金や補助金は経営者が興味を示しやすい話題の1つです。助成金や補助金は制度改正も多く、すべての制度を覚えるのは至難の業だと思いますが、話題になっているものだけでも覚えておくと、経営者との会話の糸口になるかもしれません。

具体的な利用例や申請のポイントなどを別の記事として掲載していますので、ご興味のある方はこちらもご覧ください。

小嶋俊裕経営総合事務所
社会保険労務士・中小企業診断士
小嶋 俊裕